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19歳でビジネス書を一日2冊読んでいた僕に「プレゼントしたい本」

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今週のお題は「プレゼントしたい本」。

お題が素敵ですね。人がおすすめする本ってその人の今までの生き方や大切にしたい部分とか見えて興奮するんですよね。だから、「好きな本はなんですか?」なんて聞かれたらこの人はかなりエッチな人なんだろうと興奮します。はてなブログの中の人はド変態ですね。

 

そしてそんなエッチな質問をしちゃうような僕がおすすめする本はこちら。

 

無能の人・日の戯れ

無能の人・日の戯れ (新潮文庫)

無能の人・日の戯れ (新潮文庫)

 

 

 

僕が大学生の頃は起業とか経営にとても興味があって、いろんな団体のトップや役職についていたんです。そこでビジネス書や社会人の集まる勉強会とかで得たノウハウの実験を繰り返していました。最高に意識高い系だったし、大半には凄い嫌われたし、ほんの極一部には凄い好かれました。大学では経済とマーケティングの講義も受講していたのでビジネス書で理解できないことはあまりありません。読めば読むほど、「ああ、またほとんど同じこと書いてるなー(ドヤァ)」というデジャブが起きやすくなり速読が加速していきます。本は大学の購買で立ち読みしたり、図書館で読んだり。一日5冊くらい余裕で行けてた時期もあります。しかもただ読むだけじゃなくて要点をまとめたりする気持ち悪さ。一流企業でイケイケな人を相手に「マズローの欲求5段階説」についてディスカッションしたりしながら意識の高さに磨きをかけていました。

 

意識高い日々を過ごして大学を卒業した僕はベンチャー企業に就職。研修を終えて新規事業の立ち上げ部門に配属されるとさらに意識が高くなりました。同期の女の子には「あなたみたいに頑張れない!」なんて泣かれたこともありました。今思うと当時の僕はかなりアレな人でしたが、そのときは「ベンチャーにきて、自分の給料も稼げないとは責任感の欠如した奴だ」とか思ってたんですよ。社会人1年目でこれ。やばい。そして、そういうケースがあったことを意識の高い人が参加する勉強会で報告して、自分がどう立ち回れば、泣いた女の子が頑張れるかと意識高いディスカッションをしたりしていました。

 

そんな僕に数少ない友人が面白いとプレゼントしてくれたのが、つげ義春の「無能の人・日々の戯れ」。もう衝撃でした。川で拾った石を売ったり、社会的地位が低い人が、ささいなことで口論したり、そしてささやなか幸せを感じている瞬間がたんたんと描かれているんです。“社会人とはこうあるべき” “人間とはこうあるべき” みたいな考えがガッチガチに脳みそに構築されている僕にはまったく理解できませんでした。でも、1年以上かけて何度か読み返すうちに、“人の根本はこういうものなんだ”と思えるようになりました。理想を求めるのもいい。自分が頑張るのも良い。でも、相手にそれを押し付けたりするのはアホらしい。相手に勝手に期待して、勝手に裏切られてがっかりするのもアホらしい。自分にも石を売って生きようなんて思うような道があったかもしれないし、誰にでもあるかもしれない。そしてそれはとてもかけがえのないものだ。そう思った瞬間に、ドサッと頭の重いものが落ちました。それまでは日々、追いつめられるように生きていたのが、ゆったりと、どっしりと生きられるようになり、それから僕はビジネス書をほとんど読まなくなった。

 

あの本には自分が見たくない、認めたくない、改善したいという部分が詰まっていたんだと思う。そして人はその部分を受け入れられた時にはじめて他人も受け入れられるようになるんだと思います。自分を否定してしまう人はきっと他人も否定しやすい。そんな状態で勉強すればするほど、努力すればするほど人の大事な部分から遠ざかっていく。そんな時に僕はこの本に出会えました。

 

もし、意識が高くなりすぎて、自分の足元に意識がいかなくなっている人がいたら、僕の友人がしたようにこの本をプレゼントしたい。